オー・ルーシー!(OH LUCY!)
配給:ファントム・フィルム
監督:平栁敦子(ひらやなぎ あつこ)
脚本:平栁敦子、ボリス・フルーミン(Boris Frumin)
出演:寺島しのぶ、南果歩、ジョシュ・ハートネット(Josh Hartnett)
公開日: 2018/2(2018/4)
ジャンル:ドラマ
「オー・ルーシー!」は淡々とした日常を過ごしていた独身40代女性が、姪の依頼で英会話教室に行くことになり、そこで素敵な外国人教師と出会い、「ルーシー」という別人になることをきっかけに転機を迎える映画です。
監督は長野県出身で17歳から渡米しアメリカを拠点に活躍されている平栁敦子さん、脚本はその平栁敦子さんとラトビア出身のボリス・フルーミンさんの共同脚本です。
主人公のOL役に数多くのテレビドラマ、映画、舞台の出演作がある寺島しのぶさん、主人公の姉役にこちらも数多くの出演作をもつ南果歩さん、主人公の姪に「デッドプール2」やポッキーのCMの印象が強い忽那汐里さん、英会話教室で主人公と同じ教室に通う男性役にこちらも大御所の役所広司さん、そして、外国人教師役には「パラサイト」、「パール・ハーバー」等に出演されているジョシュ・ハートネットさんと、とても豪華な俳優陣となっています。
本作品は日米合作映画となっていて、第67回カンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門(学生部門)で桃井かおりさん主演で上映された短編映画を長編として再映画化したものとなっています。
あらすじ
快速列車の通過アナウンスが流れる駅のホーム、列車を待つ一人の女性(川島節子/せつこ/ルーシー/寺島しのぶ)、突然、後ろから「じゃあね」と声をかけられたかと思うと、直後に線路へ飛び込む男性、節子は自殺の現場を目撃してしまいます。会社の喫煙室、人身事故で遅刻したことで会社の先輩同僚(佳子/よしこ/山口みよ子)と雑談する節子、会話の後で携帯電話に着信があります。
電話は節子の姪の美花(みか/忽那汐里)からであり、ランチに付き合って欲しいという内容でした。
仕事中も咳をすることが多い節子は、上司の部長から体調とタバコを心配されます。
言われたそばからお昼休憩に入ると外でタバコを吸う節子、美花と約束した場所は「お帰りなさいませ、お嬢様」とメイド服の女性がお出迎えしてくれるメイド喫茶でした。美花はここでメイド姿で働いています。
軽く雑談を交わす二人、節子は昔、美花のお父さんと付き合っていたこともあるようです。
そして、美花が節子を呼んだ本題が、英会話の教室を代わりにとって欲しいという依頼でした。
美花が早急にまとまったお金が必要になったということで、美花が受講している英会話教室に節子が参加し、代わりに60万を用立ててくれないかということです。
体験受講のために英会話教室に向かう節子、到着した場所はカラオケ店のような雰囲気、受付して301教室に案内されます。
教室にはイケメンのアメリカ人講師(ジョン/ジョシュ・ハートネット)が待っていて、節子はいきなりハグされます。
そして、ジョンが「PICK UP」と書かれた安っぽい箱を用意すると、そこから1枚とるように言われた節子、箱から取り出したのは「LUCY」と書かれた名札でした。
さらに、ジョンは教室にあったなかからブロンドのかつらを選んで節子にかぶるように指示します。
その教室では、節子は「ルーシー」と名乗るように言われます。
授業後、トイレの鏡で自分のいつもと違う姿を見てまんざらでもない節子、かつらを返し忘れたことに気づき、教室に戻ります。
教室に戻ると、トムと名乗る日本人男性の先輩受講者(小森/トム/役所広司)がいて、一緒に授業を受けることになります。
トムとのハグには抵抗を覚える一方で、節子はジョンにハグをされている間、特別な感情を抱くようになります。
その帰り、トムと一緒に帰宅する節子、トムは妻が他界してからその英会話教室に通い初めて、すでに4ヶ月目になるということです。
節子は警戒してなのか見栄なのか、結婚はしていないが彼氏がいるとトムに言います。
トムは本名を小森と名乗り、元刑事で、現在は警備コンサルタントをしていると自己紹介します。
二人は人身事故による電車遅延のアナウンスが聞こえてくる駅の近くの歩道橋で別れます。
家でもブロンドのかつらをかぶる節子、美花に電話して、とっても変わった学校ね、と感想を述べつつ、美花の代わりに英会話教室に通うことを告げます。
日が変わって、会社では42年間会社に勤めた先輩同僚の佳子さんが退社する日でした。
会社のことよりも英会話教室が楽しみで仕方のない節子、うきうきで英会話教室に向かったのですが、受付で呼び止められて、今日の授業はキャンセルだと言われます。
さらに、ジャン先生がアメリカに帰るといって突然辞めたと、衝撃の報告を受けます。
教室を出た節子、すると外にはタクシーのそばで誰かを待っているジャン先生がいました。
ジャン先生が手を振るのを見て自身も手を振る節子、しかし、ジャン先生が待っていた人は、節子ではなく、メイド服を着た美花でした。
タクシーに乗ってそのまま消える二人、節子はその場で立ち尽くしてしまいます__
感想
ブロンドのかつらにピンポン玉を加える寺島しのぶさん、コメディタッチの軽い作品かと思っていたら、自分の利益、エゴのためであれば他人を陥れることなど平気な人たちが数多く登場する少し重たい人間ドラマな作品でした。
40代未婚で閉塞的なルーチンワークの日々を過ごしていたOL、ひとつの出会いがきっかけで転機が訪れますが、共感できたり、見苦しかったり、痛かったりと、映画的な軽い展開もあれば、現実を直面させられる重い展開もあり、絶妙なバランスで進んでいく作品だと思いました。
節子を中心になかなか上等な性格をしている女性も多いです。「勝手にふるえてろ」や「生きてるだけで、愛」等、イタいタイプの登場人物も多く目にするようになってきていますが、日米合作作品の本作品を海外の方が観て、日本人はこんなタイプの人間ばっかなのかと思うのか、海外の方がどれだけ共感するのかが若干気になります。
ただ、冷静に考えると最後の役所広司さんが演じるトムが、なんでそこにいるのだろうという意味で最もクレイジーな存在なのかもしれないと思っています。きれいにまとめるためには必要だったのでしょうが……
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