11人いる!(じゅういちにんいる!)
作者:萩尾望都(はぎお もと)
出版社:小学館
掲載誌:別冊少女コミック
巻数:全1巻(1994/11) ※雑誌掲載は1975年
「11人いる!」は宇宙大学の入学試験を舞台に、10人しかいないはずの受験生が11人いることで、疑心暗鬼になりながらも宇宙船内で53日間漂泊する試験に協力して合格しようとするSF作品です。
作者の萩尾望都さんは福岡県出身で、他の著書に「ポーの一族」といった作品があり、2012年春にはその優れた文化への貢献度を評価され、少女漫画家としては初の紫綬褒章(しじゅほうしょう)を受章されています。
本作品は、テレビドラマ化、アニメ化、更には複数回にわたる舞台化もされています。
あらすじ
技術の驚異的な促進によって宇宙への進出が容易になって数百年、地球は小さな紛争を経験しながら、いくつかの惑星を植民地化し、総合政府テラを発足させました。
その後、テラは星間連盟に加入します。星間連盟はロタ、セグル、サバの三大国と、いくつかの種で構成される組織で、異星人間での結婚も可能です。
それから400年ほど経過し、テラも三大国に続く強国となります。
宇宙大学の受験会場、最終テストはコンピュータによって選出された10名でチームを組んで実施され、その内容は最終試験会場となる宇宙船に行けばわかる、と試験官から説明されます。
宇宙服を着て最終試験の場所となる宇宙船へと移動する受験生たち、無事、船内へと到着しハッチを閉めて移動しようとします。
しかし、そのとき一人の受験生が叫びます。
“おい! 一人多いぞ 十一人いる!”
疑心暗鬼になる受験生たち、しかし、戸惑っていても仕方がないということでヘルメットを脱いで顔を合わせていきます。
すると、爆発音が響き、大きく船内が揺れます。
急いで司令室へと向かう受験生たち、指令室内でメインコンピューターを起動させ、船内図を確認し爆発の原因を確認して対処します。
直後、船内に試験の案内メッセージが流れてきます。それは宇宙空間で宇宙船・白号に乗務員として53日間漂泊すること、一人でも脱落者が出た場合は十人全員が不合格となること、非常事態時には緊急用のボタンを押すこと、が説明されます。
すでに十一人いることが非常事態だと言う意見もありましたが、十一人は協力して試験合格を目指します__
感想
難関試験合格のために宇宙船内で53日間を過ごすというSFサバイバルの話、こちらの作品が雑誌に掲載されたのは1975年ということで半世紀近く昔の漫画ということになります。
それでも2000年以降で4回以上は舞台化されているあたり、今なお魅力的な人気作品であることがわかります。
クローズド・サークルな宇宙船の中に正体不明の受験生が一人いるというミステリー、宇宙空間で思わぬトラブルが発生するというサバイバル、性格・種族が異なる受験生たちが協力して試験に挑むという青春ドラマ、これらを非常にシンプルにまとめてある作品です。
国の異なるキャラクターのそれぞれの文化や慣習を尊重したり、LGBTを想起させるようなキャラクターがいてその存在を認めたり、等、時代に関係なく色褪せることの無いおもしろさが詰まっている作品です。
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