漫画 ~ ONE OUTS ~




ONE OUTS(ワンナウツ)
作者:甲斐谷忍(かいたに しのぶ)
出版社:集英社
掲載誌:ビジネスジャンプ
巻数:全20巻(1999/6 ~ 2009/2)





「ONE OUTS」は平均120km台のストレートしか球種を持たない投手が、日本のプロ野球界を舞台に、抜群の制球力と驚異的な勝負師としての才覚を用いて、個人としてのギャンブル勝負とチームとしてのペナントレース優勝を目指していく野球漫画です。


作者の甲斐谷忍さんは鹿児島県出身で、他の作品に「太平天国演義」や「LIAR GAME」等、戦略や人の心理状況をストーリーに組み込んだおもしろい作品を多く持つ作家さんです。


本作品は、2008年秋~2009年冬にかけてマッドハウス制作、日本テレビ系列でアニメ化もされています。



あらすじ


埼京彩珠リカオンズという3年連続最下位という超弱小チームの中で一人気を吐いているベテラン児島弘道(こじま ひろみち)、不運の天才打者と称される彼はオフを返上し、優勝に足りない“何か”を求めて沖縄で自主トレに励んでいました。

帯同していたバッティングピッチャーが怪我をしてしまったということで急遽、地元で代わりの投手を探していたところ、「ワンナウト」という米兵の間ではやっている野球の賭博ゲームに誘われます。

そこで出会った日本人ピッチャーが渡久地東亜(とくち とーあ)と名乗る男でした。

球が速いわけではなく、キレのある変化球を駆使しているわけでもない、しかし、どこか得体の知れない雰囲気を帯びたその男、彼はプロのチームに加入し、利益をあげたいだけのオーナーのもと、「ワンナウト500万円をオーナーが渡久地に支払う、逆に失点するごとに5000万円を渡久地がオーナーに支払う」というワンナウツ契約を結びながら、ペナントレースをかき乱す存在となっていきます__



感想


弱小チームに非凡な才能を持った主人公が加入し、チームを優勝に導く。これだけ書くとありきたりなスポーツ漫画のように思いますが、この作品は一味違います。

作者が“野球版アカギ”と形容したことがあるという話がとてもしっくりきますが、負ける姿が想像できない主人公の存在、反則だろうが、邪道だろうが、きれいごとではなく目的を真摯に見据えて勝負に取り組む姿勢は他のスポーツ漫画と一線を画します。

確かに駆け引きやルールの盲点をつくようなギャンブル的な要素は野球漫画でないという意見も理解できなくはないです。しかし、人間が関わる以上、心理的な要因からは逃れることができず、またルールというものは必ずしも正義ではないということを、野球というスポーツを通してスリリングに描いていることに驚嘆です。何より読んでいてとてもおもしろかったです。

反則合戦の試合は漫画全体の中でも屈指の名シーンだと思っています。


お前らは 勝負というものを勘違いしている
勝つというのは 力において 相手を上回る事でも
ましてや 幸運を待つ事でもない
勝つとは すなわち…

負かす事 蹴落とす事
つまずいたヤツを踏みつぶす事
ドブに落ちたイヌを 棒で沈める事
ぱっくり開いたキズ口に 塩をすり込む事

勝ち残るとは屍を超える事だ…
決して美しい事じゃない
むしろ残酷な事なんだ
それでも頂点に立ちたいと言うのなら
鬼になれ





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