ビジランテ
配給:東京テアトル
監督:入江悠(いりえ ゆう)
脚本:入江悠
出演:大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太
公開日:2017/12
ジャンル:ヒューマン、サスペンス
「ビジランテ」は、埼玉県深谷市の地方都市を舞台として、異なる人生を歩んできた三人の兄弟を主人公に政治や暴力、地方自治の社会問題、人の繋がりを描いたヒューマンサスペンス作品です。
監督は「ジョーカー・ゲーム」、「22年目の告白 -私が殺人犯です-」等の作品があり、本作の舞台ともなっている埼玉県深谷市出身の入江悠さん、脚本も入江監督が担当した原作のないオリジナル作品となっています。
小ネタとして、映画で使用した三兄弟の家は同級生の実家を借りていたという話もあります(⇒産経ニュース:「ビジランテ」は“埼玉・深谷”愛か? 大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太で描く地方都市の暗闇)
主人公である三兄弟を演じているのは、大森南朋さん、鈴木浩介さん、桐谷健太さん、他にも次男の妻役として篠田麻里子さん、三兄弟の父親役に「ポチの告白」等の菅田俊さん、デリヘル嬢役に「かしこい狗は、吠えずに笑う」等の岡村いずみさんが出演されています。
あらすじ
腰くらいの高さの水深の川を渡り必死に男から逃げている三人の少年、首から血を流しながら怒声を発し執拗に追いかけてくる男(菅田俊)、幼い少年たちは男に捕まり家に戻されます。
母の遺影が近くにあるなかで子供たちに襲い掛かる暴力、長男である一郎はその家を飛び出していきます。
それから30年が経過した埼玉県深谷市、選挙ポスターが掲げられている神藤企画という事務所、そこから離れた場所で納骨式が行われています。
喪主である神藤二郎(鈴木浩介)は地元の市議会議員です。結婚して妻(篠田麻里子)も子供もいます。式の後も再来年度建設予定のアウトレットモールに関する政治の話をしています。亡くなった神藤家の父親の遺産となっている土地もそのアウトレットモール建設予定地に含まれているようです。
場面変わって、複数の女が床で雑魚寝している乱雑な事務所、店長と呼ばれる男もそこで寝ていましたが、電話の着信音に起こされます。電話は二郎からのものでした。三郎(桐谷健太)は暴力団をバックにデリヘルで店長として雇われています。
二郎の用件は父親の遺産の話であり、他には何もいらないから、アウトレット建設予定地であるシマハシの土地3,200坪だけは譲って欲しいとの三郎へのお願いでした。三郎は親父のものはすべて要らないとそっけなく告げます。
二郎と別れた後、仕事に向かうために車を運転中に何かを目にする三郎、その夜、仕事中にも関わらず昼に見たことが気になって、亡き父が住んでいた実家に車を走らせます。
家に到着した三郎は外から家の居間を覗くと、一瞬、死んだはずの父親が女と性交している光景を目にします。気を取り直して改めて覗くと、家の中で知らない男が女と性交していました。
翌日、建設予定のアウトレットモールに関して市民と語らう会が開催されています。
建設に反対する市民からは怒声、やじが飛んでいます。その会に参加していた二郎でしたが、三郎に呼び出され、誰かが家にいるということで一緒に家に向かいます。
向かった家には見知らぬ女しかいなく、男がいる(父親の残した土地と思われる)空地に向かう二人、「私有地 立ち入り禁止」の看板を立てている男、三郎は「あんた神藤一郎?」と尋ねます。
一郎はなぜか父親の署名入りの遺言公正証書を持っていて、その土地は絶対誰にも譲らないと主張してきました。
父親が死んだから30年ぶりに帰ってきました、遺産はもらいます、そんなのが許されるのかと憤る二郎の妻、モール建設のメンバーになることは政治家として出世するために重要なことであり、一郎が現れたことで思惑が狂ってきています。
二郎は「けやき防犯会」という市の自警団で団長を務めています。自警団は定期的に夜に市内を見回っています。市内には外国人のコミュニティといった騒音トラブルを引き起こす集団もいて、防犯のために活動しているようです。
その夜、家の様子が気になって見に行く三郎、家に着くと女(さおり)に一郎が暴力を振るっている現場に出くわし、家から飛び出したさおりのお願いで三郎はさおりと一緒にドライブすることになりました。
さおりからの話によると、一郎は横浜の桜木町にいたのですが、やくざに追われてクスリに逃げているということです。
一郎は家の中で何かを探しています。机の上には注射器と薬が入っていたと思われる空っぽの袋が置いてあります。
その後、三郎のデリヘル店に電話が入ってきて外出中の三郎に代わってスタッフが対応します。
派遣先は一郎のいる家でした。デリヘルのサービスを受けている最中に昔の家族の写真を見た一郎は突然と発狂しだして、派遣されてきた女性にサービス外の乱暴を働きます。
三郎は連絡を受け、すぐに駆けつけ、女性を病院に連れて行くように従業員に指示した後、一郎のもとに怒鳴り込みます_
感想
埼玉の地方都市を舞台に、政治、暴力団、薬、遺産、外国人居住者とのトラブル等を扱った、いわゆるノワール映画です。人間関係の繋がりを意識するシーンもありますが、そういった場面も決して希望を感じるわけではなく、全体的にどこか暗い雰囲気を帯びています。
個人的に一郎が絶対に土地は渡さないとこだわる理由にもやもやとしていましたが、むしろはっきりさせないことで作品の全体の閉塞感がある雰囲気を保っていたのかもしれません。
三兄弟が主人公ですが、決してありきたりな家族愛をテーマにしいているわけではないこと、一郎の土地を守る明確な理由なんて提示する必要がなかったと考えれば納得できます。
俳優陣が素晴らしかったと思います。特に三郎を演じた桐谷健太さんは印象が強く、役柄の面もあったと思いますが、素晴らしい俳優人がたくさんいた中でも存在感は抜群だったように思います。
正解がわからない世の中で次々と選択を迫られる登場人物、そして正解かどうかは結局わからないことが多い世の中、そういった部分を暴力や政治といった部分を加えることで、あえてわかりやすく表現している映画だと思います。ということでストーリー的にはなかなかお勧め所を説明しにくい作品でもあります。
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