小説 ~ タックスヘイヴン ~



タックスヘイヴン
著者名: 橘玲(たちばな あきら)
出版社: 幻冬舎
発売日: 2014/4(2016/4)
ジャンル:サスペンス




「タックスヘイヴン」は橘玲さん著作、タックスヘイヴンの地、シンガポールで発生した日本人金融コンサルタントの謎の墜落死、事故か他殺か、巨額な金の行方、謎の真相を求めて二人の男が活躍する様子を描いた金融・サスペンス・ハードボイルド小説です。

著者の橘玲さんは小説に限らず新書などの著作もあり、フィクション・ノンフィクション両方で経済に関する作品があります。

他の作品に、第19回山本周五郎賞候補となった「永遠の旅行者」や、「マネーロンダリング」といった作品があります。

雑誌の連載も複数持っていたり、NHKクローズアップ現代+に参加されたりもしています(※テレビ出演をしているわけではなく、Twitterを利用した参加)。



あらすじ


外資系銀行を退職し、フリーのプライベートバンカーとして活躍する古派蔵佑(こばくら たすく)、マネーロンダリング規制が世界的に強化された社会で、海外の金融機関ではまともに相手にされない風俗業やパチンコ業界といった現金で商売をしている連中を顧客相手として仕事をしています。

現在抱えている案件は情報屋の柳正成(リュ・ジョンソン)から紹介された顧客、関西を中心に風俗業で荒稼ぎをしていた堀山健二(ほりやま けんじ)という男の相談であり、脱税による差し押さえ対象となっている5億円の現金を海外に運ぶことです。


一方、大手電機メーカーを5年前に退職し、技術書やビジネス書の翻訳をして生活していた牧島慧(まきしま さとる)の元に昔の同級生である紫帆(しほ)から相談がありました。

13年ぶりに再会した紫帆には、3歳になる娘、真琴(まこと)と北川という夫がいました。

しかし、金融マネージャーとして東南アジアで活躍していたその北川がシンガポールのホテルで転落死したということで、シンガポールの日本大使館から紫帆に現地の警察の事情聴取と遺体の確認と引取依頼の連絡があり、牧島は紫帆から一緒にシンガポールに来てくれないかとお願いされ同行することになります。

向かった先のシンガポールで、名門のスイス銀行の現地法人の男から牧島と紫帆は謎の要求を受けることになります。

どこか違和感を感じた牧島は電話で昔の同級生である古派蔵に相談することにします。

この出来事をきっかけに、牧島と古派蔵の二人はシンガポールで起きた日本人の死と失踪、消えた巨額の金が絡む国際金融事件に巻き込まれていくこととなります_



感想


タックスヘイヴンという巨額の金が絡むきな臭い人々と出来事を扱った金融サスペンス、主人公が二人いて、そのうちの一人の古派蔵がかなりハードボイルドなキャラということもあって楽しく読みすすめられました。

元・宝島社の編集者でありノンフィクションの著書も多い作者の作品ということで作中に出てくる話は説得力や知的好奇心を満たしてくれるものも多いです。

実際に2008年に発生したアメリカとスイス間の巨額脱税ほう助事件の話を作中で扱っていたり、一人あたりのGDPがアジアで最も高いシンガポールの税制システムや知的産業への取り組みが説明されていたり、建国者であるラッフルズの話といった歴史やシンガポールの食事を作中で紹介していたりしています。

主人公二人のそれぞれの視点で話が進むマルチサイト形式であるようにも思えますが、初めから二人には青春時代の仲間という接点があり、お互いに連絡もそこそこ取り合っていたため、それほどマルチサイト形式に意味があるようには思いません。

専門的な語句が多く登場して読むのに疲弊する可能性もあるかと思いましたが、複雑ながらもスピード感がある進行で読みやすかったです。サスペンス、ヒューマンドラマとしての起承転結としても、ちょうどよい落としどころだと思います。






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