小説 ~ 等伯 ~



等伯(とうはく)
著者名: 安部龍太郎(あべ りゅうたろう)
出版社: 日本経済新聞出版社(文春文庫)
発売日: 2012/09
ジャンル:歴史、美術




「等伯」は安部龍太郎さん著作、安土桃山~江戸時代に活躍した絵師であり、「松林図屏風」の作品で著名な長谷川信春(等伯)を主人公として、彼の生涯を描いた歴史長編小説です。

著者の安部龍太郎さんは福岡県出身の作家であり、歴史小説や時代小説に送られる中山義秀文学賞の第11回受賞作品である「天馬、翔ける」などの歴史小説の著者です。

本作品は2012年の第148回直木賞受賞作品です。


あらすじ


長谷川又四郎信春は能登七尾の畠山家に仕える武士の家、奥村家の生まれでしたが、十歳のときに染物屋を営む長谷川家の養子になり、養父の元で絵仏師としてその才能を開花させ、能登や加賀、越中で絵師としての名声を得ていました。

しかし、三十三歳を迎えた信春は、このまま田舎の絵仏師として埋もれるつもりのない野心家であり、当時、全国にその名を馳せていた狩野永徳と肩を並べられるような絵師になりたい、そのためには京に出るという野望を持っていました。

そんな折、身内の新年会でその想いを実家の兄であり武士である奥村武之丞に吐露してしまったことと、自分の理想を追求しすぎたことが原因となって戦国時代の武士の内紛に巻き込まれていくことになります。それは、日本一の絵師になりたいという強い想いを持つ信春だけではなく、大切な妻や三歳になる長男、養子として自分のことを大切にしてくれた義親も巻き込んでいくことになります。

信春は戦国の騒乱や他の絵師と対立しながらも周りのサポートを受けながら京を目指し、日本一の絵師を目指していくこととなります。


感想


主人公が石川県の能登地方出身であるという点、戦国時代の中で絵師という芸術・文化にスポットをあてている点、直木賞受賞作という点から読み始めました。

時代小説や歴史小説は固有名詞や台詞のために読みにくく感じることが頻繁にあることから、少し読んで敬遠することが多いのですが、本作品は比較的読みやすかったです。

もちろん、聞きなれない言葉に読書のテンポが落ちることはあるのですが、登場人物の心情や行動、家族を想う気持ちや自身の信念を通す強い気持ちは時代に関係なく受け入れやすく、響きやすかったです。

特に息子である久蔵(きゅうぞう)は、物語開始時点では3歳という年齢でしたが、物語の進行とともに大きく成長して頼もしくなっていきます。
後半の久蔵が大きく絡んでくる場面は読んでいて楽しかったです。

この小説を読み終わった後には、ぜひ1度は等伯の代表作である「松林図屏風」の実物を見てみたいと思いましたし、本作でライバル的なポジションとして登場する狩野永徳を主人公とした山本兼一さん著作の「花鳥の夢」もぜひ読んでみたいと思いました。

等伯は 大河ドラマの題材としても充分におもしろく思えたため、いずれは映像化するのではないかと期待しておきます。






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