舞台 ~ 縁ろず屋 第4回公演「まねしつぐみ」~





公演:縁ろず屋(よろずや) 第4回公演「まねしつぐみ」
演出: 冨田真央
脚本: 冨田真央
公演期間:2018/05/09(水)〜2018/05/13(日) 全8公演
公演会場:新宿スターフィールド




5月12日(土)にエラバレシの広沢麻衣さんが主演を務める舞台「まねしつぐみ」の夜公演(ソワレ)を観劇してきました。

※若干のネタバレ有、個人的感想強め、記憶があやふな部分がある点をご了承願います。






あらすじ


以下、縁ろず屋様公式ブログ?より引用しています。

何かがあっても何もなくても
ただ当たり前に過ぎて行く日常。

そんな日常を変えるきっかけは
良くも悪くも
本当に些細な事。

そのきっかけによって立場が
逆転してしまったり、
今まで気がつかなかったことに気がついたり、
もしくはその変化にすら気がつかなかったり。

自分にとって当たり前で
正しいと思っていたことが
視点を変えると絶対的に間違っていたりする。

そんな「矛盾」だらけの世の中で
自分なりに精一杯生きる高校生「つぐみ」
彼女は彼女なりの高校生活を送るが
先生の言葉がきっかけで
その生活は徐々に崩れてしまう。


キャスト


以下も縁ろず屋様公式ブログ?より引用しています。

広沢麻衣(エラバレシ)A/B
村川翔一 A/B
増野彩夏 A

吉村咲美 B
三浦涼 A
齋藤大希 B
瀬口杏奈 A
遠藤しずか B
沼瞭那 A
麻生あゆみ B
河野奈々 A/B
堤聡一朗 A
榊原雄 B
佐野大輔 A
山崎愛仁 B
通崎千穂 A
清田里美 B


縁ろず屋さんは本作品の脚本や演出を務める冨田さんや演者として出演する河野奈々さん等が立ち上げた劇団です。
過去には舞台以外にも食事イベントを開催されたりもしているようです。

本作のタイトルにある「まねしつぐみ」について、マネシツグミというその名が示すように他の鳥の鳴き声やその他の音を巧みに真似する鳥がいますが、話にどのように絡んでくるのか、どんな展開かが予想できない中、楽しみにしての観劇でした。

ちなみに情報によると「A」班と「B」班ではそこそこ内容も異なるとのことです(私は「A」班のみ観劇しています)。






ストーリー等の補足


後で見返したときのための簡単な補足情報です。



 主役は高校2年生の「つぐみ」、仲の良い麻衣子と茉莉と一緒に行動することが多く、また、誠司という彼氏もいて日々の楽しい学校生活を過ごしています。

 つぐみは麻衣子が喜ぶと思って、リップやアクセサリなど、麻衣子とお揃いの物をたくさん持っています。

 友人の麻衣子は同じクラスメイトである奈緒に対する態度が少し冷たく見えます。皆で一緒にカラオケに行こうという話になったときに誠司が奈緒を誘おうとしたら、来ない前提で麻衣子が奈緒に話かけたり、喉が渇いたときに飲料をみんなの分、奈緒に買ってくるように頼んだりといったりです。

 ある日の放課後、つぐみの教室に一人の女生徒(黒崎恵)がつぐみの席に座っていました。教室に戻ってきたつぐみと出会い、これをきっかけにつぐみと黒崎先輩は時折話をする仲になります。

 つぐみは周囲にあわせた行動をとることが多く、孤高な存在である黒崎先輩にちょっとしたあこがれを抱いているようです。一方で先輩は過去に何か後悔していることがあってつぐみと話をしているようです。

 そして、一見まったく異なる学校生活を送っているようなつぐみと黒崎先輩に対して、つぐみの担任である吉岡先生は「よく似ている」と意味深な発言をします。



 そんな生活を送っていたつぐみでしたが、ある日の朝、登校中にきれいなカワセミがいたということがホームルームの話題になり、それがきっかけで状況が一変することになります。

 学生時代に鳥類学を専攻していたという吉岡先生に対して、生徒から「好きな鳥はいるんですか?」と質問が飛び、それに対して先生が「マネシツグミ」という鳥を回答します。

 マネシツグミは他の鳥の鳴き声やその他いろいろな音を真似するという特徴があるという話になったときに、麻衣子が「“つぐみ”みたいじゃない」と発言します。

 つぐみはその友人の何気ない一言に大きく動揺し、麻衣子に反論した後でいたたまれなくなり、教室から飛び出してしまいます。

 麻衣子はそんなつぐみの態度を不快に思い、茉莉を誘って学校をサボります。

 そして、平穏だった日常は突然に崩れていきます_



感想


以下、印象に残った点です。

・ストーリーテーマは集団生活におけるコミュニケーションの問題、いわゆる「いじめ」の類を真っ向から扱っています。

・タイトルはマネシツグミという鳥の存在と、友人の真似をする女子高生「つぐみ」をかけたもののようです。

・吉岡先生役の村川翔一さんは身長が高く、また遠目から見てもわかるくらいイケメンでした。「好きな鳥は?」と聞かれてマネシツグミというマニアックな回答でも、吉岡先生が言えば格好良く見えます。

・黒崎先輩のクールで淡々とした言動がかなり好きでした。演じられていた増野彩夏さんは本作の初日で舞台300ステージ目を迎えたということですが、かなり印象に残りました。

・物語の序盤に教師同士が今日飲みに行かないかと会話する場面があります。最初はキャラクター紹介とギャグパートを兼ねているだけと思っていましたが、公演後に思えば、これは大人の世界では「何でも言い合えない」、察する力、忖度する能力も必要だということを作品内で提示していたのではないかと思います。そして、「何でも言い合える」友人の大切さをより引き立てているように思えます。

・麻衣子が喜ぶと思って真似をしていたつぐみ、学校の鞄のアクセサリーとかもお揃いでしたが、最もお揃いということが目立つはずの制服の着こなし方はまったく違いました。

・つぐみは「マネシツグミ」なら、序盤から意味深に登場した黒崎先輩が「クロサギ」の可能性があると思い、少しその可能性を追っていたのですが、関係なかったようです。

・吉岡先生が黒崎先輩のことは「黒崎さん」呼びだったのですが、記憶違いでなければ黒崎先輩の友人のことは「サキ(さん)」呼びだったように思います。
 苗字と名前が混在するのは別に構わないのですが、両方「サキ」が含まれているため、やり取りを聞いていて少し言葉がうるさく感じる場面が1箇所ありました。

・茉莉が飲み物に「お茶」を常に要求していたのですが、その名前と要求のためにジャスミン茶(茉莉花茶)が飲みたくなるような……

・麻衣子には本当に悪意はなかったのでしょうか。

・終演後の挨拶で広沢麻衣さんが翌日の公演のことを言う際に何度か「せんしゅうら……、最終日」と言いなおしていたのが可愛かったです。そして、それだけ一語一句を大切にしているんだなと思えました。



本作品はコミュニケーションという普遍的な題材を取り扱っているため、話はとても追いやすかったです。個人的にはつぐみと黒崎先輩と吉岡先生の感情が高ぶった中でのやり取りの部分や、最初は冗長じゃないかと思われた先生同士のいわゆる大人のコミュニケーションが作中にしっかりと意味合いを持っている部分が印象に残っています。
 わかりやすい一方で取り扱いも難しい題材でしたが、起承転結はわかりやすく、おもしろくて考えさせられる舞台でした。

 ところで本作品であえて気にしたくなる点として、麻衣子が本当に悪意がなかったのかを考えるのもおもしろいと思いました。
 コミュニケーションの能力に長け、中心的存在である麻衣子のことですから、窮地に立たされそうになったあの場面で、悪意はあったけど、なかったと主張することも麻衣子なら可能だったという考え方もできなくはないと思います。
 私としてはそれはないかなという結論でしたが、上記もひとつの考え方としておもしろいと思います。
 “ない”という結論に至った理由は、受け取った人にとっては悪意を感じても、発した人には悪意や悪気はなかったという、コミュニケーションの難しさが本作のテーマになっているように思えたことからです。
 また、嫌な理由となってしまいますが、麻衣子が本当に打算的な性格をしていれば、クラス内に彼氏という味方がいる人をあえていじめの対象とすることはしないでしょう。
 尚、もし麻衣子の苗字がクロサギが暗示できる「黒崎」であり、つぐみが彼氏持ちじゃなかったのであれば、私だったら麻衣子には悪意があったんじゃないかという無駄に深読みする結果になったかもしれません(クロサギという鳥に決して悪い意味はなく、某漫画の影響で詐欺師的な印象があるだけの風評被害も甚だしいのですが)。

縁ろず屋さんは次回公園の予定は現時点で公開はされていませんが、他にどんな話を扱っているのか気になりました。


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