ピアノのムシ
作者:荒川三喜夫(あらかわ みきお)
出版社:芳文社
掲載誌:週刊漫画TIMES
巻数:既刊12巻(2013/10~2018/03)
「ピアノのムシ」は皮肉屋で接客対応に難あれども技術は超一流のピアノ調律師を主人公として、ピアノに携わる様々な人々や企業のドラマ、隠された想いに焦点をあてたオムニバス形式の音楽漫画です。
週刊漫画TIMES初登場時は「オトノムシ」というタイトルで掲載されていました。
著者の荒川三喜夫さんは放送作家の吉原じゅんぺいさんと大学生時代のサークル仲間ということで、その縁が影響しているのかどうかは定かではありませんが、仕事中はBGMとしてラジオをよく聴いているようです。
あらすじ
とあるピアノ販売店、女性客と店舗スタッフによるアップライトピアノの商談中に突然と無精ひげをはやした口の悪い男が割り込んできます。
その男は少しだけ演奏して、店舗スタッフが説明していたアップライトピアノの材質やメーカーに嘘偽りがあることを指摘します。
怒った店舗スタッフが営業妨害だと問い詰めようとしたところ、奥からその販売店の社長が現れ、"俺が呼んだんだ”と止めます。
少し弾いただけでピアノの素性を暴いた男の名前は「蛭田敦士(ひるた あつし)」、”音の詐欺師”と社長から称される蛭田の元には並みの調律師にはできない頼みが舞い込んできます_
感想
本屋大賞にも選ばれた宮下奈都さん著作の「羊と鋼の森」を読んで、ピアノ調律師の漫画がないかと探して見つけた本作品、専門的な題材を扱っていますが、おもしろくて次々と読み進められる作品でした。
「羊と鋼の森」の主人公は調律師として勉強中な面が多く、共感しやすい存在であるのに対して、本作品の主人公である蛭田は調律師としてかなり高い技術と経験を持った天才に近い存在で、感嘆する場面が多くなっています。
性格に難がある蛭田ですが、そのマイナス印象を大幅に上回る確固たる技術と信念があるため読んでいて爽快感が得られます。
音楽やスポーツを題材にする作品に天才の存在は不可欠だと思うのですが、専門的な題材である調律師、正解の音というものが決して一意ではないピアノの調律というものを扱っているにも関わらず、蛭田の言動に説得力があるのは、知識・技術の説明や描写が納得しやすいものだからだと思われます(実際の真偽等は正直わかりませんが)。
しかし、気になってしまうのがこのコミックスの構成、こちらオムニバス形式の作品で「Chapter.1 <前半>」のように各話をナンバリングして、大半が前半と後半の2話で話がまとまる形となっているのですが、コミックに収録されている最終話は<前半>で終わることがほとんどです。
せっかくオムニバス形式で読みやすく、また、内容もおもしろいのに、この構成をとっているために読後感がスッキリしないのは個人的に致命的でもったいないなと思います。
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