AIの遺電子(あいのいでんし)
作者:山田胡瓜(やまだ きゅうり)
出版社:秋田書店
掲載誌:週刊少年チャンピオン
巻数:全8巻(2016/04~2017/11)
「AIの遺電子」は近未来を舞台に、人の見た目・行動・考え方と遜色のないロボットであるヒューマノイドを治療する主人公を中心として、人間とヒューマノイドの差異が引き起こす問題とその解決策を模索する姿を描くオムニバスストーリー形式のSFヒューマン漫画です。
著者の山田胡瓜さんは神奈川県出身で、IT記者としての経歴も持ち、ITに関する造詣も深く、本作品にもその経験が活かされているようです。
尚、本作品の連載は終了していますが、2017年の10月より月刊誌である別冊少年チャンピオン号で、本作品の続編にあたる『AIの遺電子 RED QUEEN』を連載中です。
あらすじ
技術の発展目覚しく、国民の1割がヒューマノイドとして人間と共存する世界、ヒューマノイドの専門医である須堂光(すどう ひかる)は出張診療に出かけます。
そこはヒューマノイドの夫婦と人間の養子として迎えられた娘が暮らしている家庭でした。
ママの体の震えが止まらないということで、医者の須堂が呼ばれたのです。
須堂は診察の結果、ママがウィルスに感染していること、そしてその夫婦が法律で禁止されているヒューマノイドのバックアップを自分たちで実施していることをすぐに見抜きます。
このままの状態で放置すれば、半月ほどで妻が機能停止になるという状況でした。
娘は診察を終えて帰宅しようとした須堂に尋ねます。なぜバックアップをとることが悪いことなのかと。
バックアップが禁止されているのは様々な問題を内包されているということですが、詳細はわかりません。
バックアップ前のデータがウィルス感染前であることを確認したパパは、「今の」ママから同意をとってバックアップデータを利用して1週間前の状態に戻そうとします。
娘はバックアップ前に戻ったママと今のママが本当に一緒なママなのかということについて考えます。
ママは1度は同意してバックアップ前の状態に戻ろうとするのですが_
感想
1話から夫婦間、親子間の愛と道徳や倫理観、何が大切で正しくて真実なのかを訴えてくるのが印象的でした。
その後も考えさせられる話も多く、一方で1話完結型であるため読みやすいです。
近未来版ブラックジャックといわれており、人間に近い存在として扱われるヒューマノイドを治療の対象とし、人間とヒューマノイドの違いを考えさせることによって、客観的な視点から人間のことを考えるきっかけを与えてくれる作品です。
ブラックジャック(BJ)のイニシャルのそれぞれ1文字前のアルファベットがAIになっているあたり(偶然かもしれませんが)、作品としてきれいに完成されているなと思います。
グロに耐性がある人であれば木々津克久さん作者の「フランケン・ふらん」も同じく特殊な医療と人の抱えている問題に焦点をあてているため、比較するのもおもしろいかもしれません。
また、様々なロボットを主人公として、“人間とは”、“心とは”を描くオムニバスストーリー形式のSFヒューマン漫画としては、業田良家著作の「機械仕掛けの愛」もあります。
人間もヒューマノイドも怠け者だからな
ベストを尽くすってのは至難の業(わざ)だ
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