春の呪い(はるののろい)
作者:小西明日翔(こにし あすか)
出版社: 一迅社
掲載誌:ZERO-SUM
巻数:全2巻(2016/04~2016/12)
「春の呪い」は誰よりも大切だった妹を病気で失った主人公が、妹と婚約していた男性と付き合うことになり、自身の気持ち、相手との関係、妹への想いに悩み苦しむ愛憎劇を描いた漫画です。
著者の小西さんは商業誌デビュー前から小説やイラスト、漫画をpixivやtwitter等のインターネットに投稿していた作品が人気になっており、本作はもともと小説としてプロットがあったものを漫画商業誌向けに完成させたもののようです。
現在は漫画月刊誌アフタヌーンで「来世は他人がいい」を連載中です。
こちらの作品も血筋や周囲に縛られる男女の物語ではありますが、全体的に重い雰囲気が漂っている「春の呪い」と比較して痛快な場面も多くあり、「春の呪い」では味わえなかったおもしろさを感じられます。
本作品は『このマンガがすごい!2017』の「オンナ編」で第2位にランクインしています。
あらすじ
春の季節が過ぎ去ろうとしている日、主人公の立花夏美は寝坊してデートに遅れそうになります。
デートの相手は柊冬吾、相馬グループという一大財閥の相馬家の分家である柊家の息子であり、誰もが目を引く男前です。
しかし、そんな男性とのデート中にもかかわらず、夏美はどことなく様子がおかしい感じです。
それは夏美の妹である春の存在が関係しています。
柊冬吾はもともと春の婚約相手でした。
婚約のきっかけはお見合いです。柊家が立花の女系の血筋を求めたことによる政略結婚です。
生みの母親に似て天真爛漫で奔放な姉である夏美よりも、かわいくて大人しくて頭がいい妹の春のほうに白羽の矢が立ったのです。
出会う前こそ顔も知らない相手との当然沸いて出た結婚話に不安になる春でしたが、その心配はまったく杞憂に終わります。
春は冬吾のことをすぐに大好きになります。そして強く願うようになります。
この人と結婚したいと。
しかし、そんな春を病魔が襲います。
夏美はかけがえのない大切な存在である春を看病します。
夏美と春の両親は1度離婚しています。
現在は父の再婚相手である義母や義弟とともに暮らしていますが、心の中ではその生活にどこか馴染めずに、いつか春と二人で暮らして生きたいと強く願っていました。
でも、そんな夏美の願いを知る由もなく、春は冬吾のそばにいたいと強く思うようになります。
夏美は春を奪い去ろうとする冬吾を殺してやりたいと思ったことさえありました。
結局、春は病気によって亡くなってしまいます。
死ぬ間際でも春が最後に名前を呼んだのは、夏美ではなく、冬吾の名前でした。
春の葬儀の後、血筋に縛られていた両家は夏美と冬吾が付き合ってみればどうかと提案します。
大切な春がいなくなった夏美にとって、その提案は許されないものではありましたが、とある条件をつけることで冬吾と付き合うことにしました。
その条件とは“春と冬吾が二人で一緒に行った場所に夏美を連れて行く”というものでした。
そして夏美は大切な妹が大好きだった相手である冬吾と付き合うことになります。
さらに、夏美はうすうすと気付き始めていました。
春が大好きだった冬吾に向けているのと同じような視線が、冬吾から自分に向けられていることに。
夏美の頭は混沌としていました、それは春の呪いのようです_
感想
心理描写や背景描写は多く、視点も夏美だけではなく、冬吾や春の視点からも語られること、こういった部分がとても丁寧に書き込まれているところが好きな作品です。
この作品はもともと小説がプロットとしてあり、漫画にしては文章量が多めかもしれませんが、漫画だからこそ描ける登場人物の機微な表情の違いがあらわせる、小説だからこそできる重い心理描写を詳細に記載できる、とそれぞれのいいところを上手く活用しているように感じました。
2巻で簡潔にまとめてある点もすごいですが、それぞれの巻の表紙の登場人物の表情や視線、背景に意味を感じられるように丁寧に作られているのが印象的です。
しかも、中表紙にもそういった演出が感じられます。
冬吾も優しくて男前のキャラクター、春も優しくて大人しいキャラクターがメインにありながらも、人間くさい部分をちゃんと見せてくれる点もよかったです。
この作品は実写化で見たい気がします。
絵がアニメタッチではないというだけでなく、内容的にもアニメ化より実写化がよく、登場人物や場面も限られていることと、心情描写を大げさに表しても違和感がなさそうな舞台化もおもしろそうかなと思います。
余談ですが、名前に夏と冬がつく登場人物が出てくる作品といえば野島伸司さん脚本のドラマ「世紀末の詩」を思い出してしまいます。
その作品では夏と冬の名前を持つ二人の間に生まれた子供に四季に関係する名前をつけていました。
この作品の場合、春と冬吾の間に子供が生まれていたり、夏美と冬吾の間に子供が生まれたらなんて名づけるのかと、少し考えてみたくなります。
しかも、中表紙にもそういった演出が感じられます。
冬吾も優しくて男前のキャラクター、春も優しくて大人しいキャラクターがメインにありながらも、人間くさい部分をちゃんと見せてくれる点もよかったです。
この作品は実写化で見たい気がします。
絵がアニメタッチではないというだけでなく、内容的にもアニメ化より実写化がよく、登場人物や場面も限られていることと、心情描写を大げさに表しても違和感がなさそうな舞台化もおもしろそうかなと思います。
余談ですが、名前に夏と冬がつく登場人物が出てくる作品といえば野島伸司さん脚本のドラマ「世紀末の詩」を思い出してしまいます。
その作品では夏と冬の名前を持つ二人の間に生まれた子供に四季に関係する名前をつけていました。
この作品の場合、春と冬吾の間に子供が生まれていたり、夏美と冬吾の間に子供が生まれたらなんて名づけるのかと、少し考えてみたくなります。
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