アオアシ
作者:小林有吾(こばやし ゆうご)
出版社: 小学館
掲載誌:ビッグコミックスピリッツ
巻数:既刊12巻(2015/04~)
「アオアシ」は愛媛でサッカーをする中学三年生の主人公が東京の強豪クラブのユースチーム監督にその才能を見出され、挫折や歓喜を味わいながら成長していく「Jユース」の世界に焦点をあてたサッカー漫画です。
著者の小林有吾さんは愛媛県の松山市出身で、聖女ジャンヌ・ダルクが現代の日本に出現した設定のSF人間ドラマ作品である「水の森」や、料理を題材にした「てんまんアラカルト」といった連載作品が過去にあります。
映画撮影を題材にしている「ショート・ピース」も熱くなれる漫画でお勧めです。
本作品はJリーグクラブチームのユースに焦点をあてているということで、スポーツライターで「Number」や「AERA」といった雑誌への寄稿実績のある上野直彦(うえの なおひこ)さんが取材・原案協力として作品に携わっています。
あらすじ
愛媛の公立中学サッカー部に所属している中学三年生の青井葦人(あおい あしと)、県予選の試合中のプレーが、故郷の愛媛に帰郷していた「東京シティ・エスペリオンFC」Jリーグユースチーム監督の福田達也(ふくだ たつや)の目に留まります。
福田監督は過去にリーガエスパニョーラのプレイ経験もある元日本代表のスーパースターで、怪我に悩まされた早熟の天才でした。
技術が拙く、自分が得点することしか考えずにむやみやたらに走り回る戦術を理解しないワンマンFW、それでも、なぜかボールを拾う葦人の存在に福田監督は注目します。
そして福田監督は一人練習していた葦人と会い、ちょっとした課題を出します。
福田監督は葦人の俯瞰してピッチを見られる目、一晩中練習を続けられる体力とサッカーへの情熱に期待し、バルサもマドリードもマンUもミランにも勝てる世界一のクラブを作るという自身の目的のために葦人をユースチームのセレクションに勧誘します。
サッカーのプロを目指す集団であるクラブユースチーム、技術の拙い葦人が通用するのか、福田監督が期待したものとは何か、希望と挫折が往来する葦人の勝つサッカーへの挑戦の物語が始まります。
感想
サッカー漫画といえば「キャプテン翼」をはじめてとして、「俺たちのフィールド」、「シュート!」、「ファンタジスタ」、「ホイッスル!」、「ANGEL VOICE」、「エリアの騎士」、「1/11 じゅういちぶんのいち」、「YATAGARASU」、「GIANT KILLING」、「BE BLUES!〜青になれ〜」とかなりの作品数を挙げることができるのですが、主人公が成長する場面にワクワクできるという意味ではこの作品がかなりお勧めです。
特定の試合や大会に焦点を当て、ライバルとなる選手やチームがいて、そこで勝つために課題を見つけ、練習し、解決している流れが多い中で、本作品は試合も練習も関係なく、ただ純然と、サッカーで勝つために課題に向き合っていくストイックなサッカー漫画だと思います。
コントロールオリエンタード、ダイアゴナルランといったサッカーの専門用語とかもジャンジャン出てきますが、ストーリーの中で丁寧に説明もあるし、ときには印象に残るシーンでそういった専門的な戦術が活用されたりしています。
サッカーの内容はもちろん、チームメイトを含めたキャラの個性や説得力のある台詞が多いのも魅力です。
コーチ陣といった大人はいいのですが、たまに本当にユース世代なのかな?と思うくらいに、しっかりした台詞もちらほら見られます。
途中からかなり意外な展開も迎えており、今後もますます楽しみな作品です。
この作品ではここまで戦術レベルのことをユースチームから叩き込んでいるというのに、現実の日本でのサッカーの試合で時に見られる意味不明な中盤からディフェンスラインにかけてのパス回しはいったい何なのでしょうか。
サッカーの試合を観戦してイライラする試合だったときには、この作品を読むと少しスッキリできます。
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