漫画 ~ 透明人間の骨 ~




透明人間の骨(とうめいにんげんのほね)
作者:荻野純(おぎの じゅん)
出版社:集英社
掲載誌:少年ジャンプ+
巻数:既刊2巻(2017/11~)





「透明人間の骨」は透明人間になれる主人公が、家庭内暴力を振るう父親の存在、崩壊した家庭、その父親の殺害、そして大切な人たちとの出会いを通して、自責の念や社会の不和、自身の存在意義に苦悩したり、変わりゆく想いを描いたヒューマン漫画です。

著者の荻野さんは過去に「ジャンプスクエア」にて「γ -ガンマ-」を連載されており、Web漫画誌である「少年ジャンプ+」で連載中です。



あらすじ


主人公の来宮花(きのみや あや)の家庭は花が小学生のときから崩壊していました。

感情をコントロールできず母親に怒声や暴力をあびせる父、花はそんな父を恐れ、顔色を伺いながら日々を過ごしていました。

どこか幼稚で暴力的な父、保身のためか両親の揉め事に我関せずの兄、そして何もできない自分、そしてそんな自分のために父から離れられない母親、幸せそうな友達の家とはまったく異なる崩壊しかけた家庭の中で、「ここに居たくない」と花が望んだとき、自分が透明になれることに気づきます。

花は当初、その透明になれる能力を、友達とのかくれんぼに利用したり、入れない教室に入ったりとした、家庭の不和から気を紛らわせるために利用していました。


しかし、悪化していく父の罵声と暴力、成長しても変わらない兄、そして学校生活においても陰湿ないじめや頼りにならない先生の存在、花はどんどんこの世界から居なくなりたいと思うようになっていき、自己主張をやめて、ただ時間が過ぎていくことを待つだけとなっていきました。

そして透明にならなくても透明人間のような存在となっていき、能力を使用する機会もなくなっていきます。


そして、花が15歳のときに事件が訪れます。

花が家に帰ってきたとき、父が母親に暴力を振るっていました。見慣れた見たくない光景ですが、そのときの様子はいつもと違いました。母親が包丁を取り出して自殺しようとしたのです。

花は思わず叫びました。「やめてお母さん!!」と。

花は気づきました。

父も兄もどうでもいい、学校のこともどうでもいい、自分のこともどうでもいい、ただ、居ても居なくてどうでもいい存在がたくさんいるなかで、自分が母親のことは好きなこと、母親にだけは居て欲しいことに。

そして、そんな度重なる暴力に耐え続けていた母親が花に言います、お母さんが居ることでお父さんを怒らせて花に怖い思いをさせていてごめんなさいと、お母さんは居ないほうがいいのかな……、と。


そして花は透明になれる能力で父親を自らの手で殺害します。



物語は花が高校生になって、新しい環境、新しい出会いを通して変わっていきます。

普通じゃない家庭で育って居なくなりたかった自分、父を殺害して普通じゃなくなった自分、でもそんな自分が今でもここに居る、花はそれでも生きています_



感想


幼いときの家庭内暴力から心を閉ざし、そして父を自らの手で殺害してしまう少女が変わっていくお話です。

決して明るく前向きな話というわけではないですし、1話以外は決して起伏の大きい物語ではないですが、主人公の感情、台詞、表情ととても丁寧に描かれているため共感しやすいです。

それにしても本当に花の笑っているシーンは少ないです、恐らく1巻には5コマもないでしょう。これからどう変わっていくのかが楽しみでもあります。

そこまで焦点はあたっていませんが、犯罪加害者の贖罪の意識や少年犯罪というデリケートな部分も取り扱っているため、これらも今後の展開に影響を与えそうです。


透明人間になれるというSF要素がありますが、その能力が活かされるのはあくまで物語を動かすためのトリガーのためだけにある印象です。あくまで現時点での話ですが。

尚、主人公は途中から出現する大切な友達のことを、何色にも染まっていないと言うことで“透明”と表現し、父を殺めた自分のことを“真黒”と表現しています。


また、なぜタイトルに“骨”という言葉を選択しているのでしょうか。

主人公の心の移ろいに焦点をあてるのであれば他の器官でもよかった気がします。

小説家の彩瀬まるさんに「骨を彩る」という作品がありますが、彩瀬まるさんは何かのインタビューで「場面によって意味合いは変わるが、変えようのないもの」といった発言がありました(WEBきららさんで確認できました)。

恐らく作者の強い意図が含まれていると思うため、今後の展開に期待しています。

(完結後に追記 2018/3/13)
「ここに居たくない」から透明になった主人公が 「ここに居たい」と強く願えたことが“骨”なのだと思います。
もっとも、その“骨”が支えるとなる意味か、中心となる意味か、気力の意味か、いろいろと考えられると思います。

関わらない方が楽だって言われちゃうとそうかも知れないけど仕方ないじゃん?
友達とか人との関わりなんて面倒なもんだよ

壊さない様に大切にする事が楽に出来る訳ないもんね



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