ルームメイト
著者名: 今邑彩(いまむら あや)
出版社: 中央公論社(※中央公論新社)
発売日: 1997/08
ジャンル:ミステリ、サスペンス
「ルームメイト」は今邑彩さん著作で、ひょんなことから知り合った女性と共同生活をする女子大生の主人公が、突然失踪した同居人の行方を求めるうちに、同居人が実は二重生活を送っていたことを知り、さらに同居人の関与が疑われる事件に巻き込まれていくサスペンス小説です。
2013年には古澤健(ふるさわ たけし)さん監督、北川景子さんと深田恭子さん主演で映画化もされています(ホラー映画ともいわれているようですが)。
あらすじ
上京して大学に通うための住居を探していた萩尾春海(はぎお はるみ)は、なかなかいい物件が見つからず途方にくれていた折に立ち寄った不動産屋で、同じく住まいを探していた先客、西村 麗子(にしむら れいこ)と出会います。
彼女は京都から晴海と同じく大学に通うために上京してきており、似たような境遇に意気投合した二人は互いのプライバシーを尊重することを条件にルームシェアを始めることにします。
ところが、出会ったときの麗子は、良家の箱入り娘の、生真面目で、ちょっと地味な印象だったのですが、ルームシェアを始めて1ヶ月も経たないうちに、身に着けるものも露出の多い派手なものに変わり、眼鏡もかけなくなりました。
加えて、それらの変化は徐々にというわけではなく、ある日を境に別人のように豹変していることに晴海は違和感を覚えます。
晴海は不思議に思いながらも本人に問いただすことはしませんでしたが、その後、麗子が突然に姿を消してしまいます。
家賃を折半していたため、支払期限にあせりだした晴海は部屋に残された手がかりをもとに、大学の先輩の協力を仰ぎ麗子の行方を調べだし、奇妙なことがわかっていきます。
麗子は晴海との共同生活とは別に、とある家庭の妻として二重生活していたようであることを知ります。
そして、彼女がワイドショーで報道されていた、ある殺人事件にも関係があったのではないかという疑惑があがり、晴美たちもまた麗子の手がかりを探しているうちに事件に巻き込まれていくこととなります。
感想 (少しネタバレを含みます)
肝となる部分を避けて感想を書くことは難しいと思われるため、少しネタバレとなってしまいますが、このミステリは多重人格を題材としています。
麗子はファッションが突如変わったり、二重生活を送っていたりしたのですが、それは麗子が多重人格者であったためです。
つまり、晴海にとっての麗子がルームメイトである意味と、麗子にとって自分の中に複数の人格が同居しているという二つの意味がタイトルに含まれているようです。
この小説は“誰が”犯人かという点で、多重人格の効果もあっておもしろくできていると思います。
ただ、私の場合は同じく“多重人格”を題材にしている多島斗志之さんの「症例A」を先に読んでおり、そちらのほうが好みだった分、こちらの作品の印象が薄くなってしまいました。
(もっとも、発表時期は「ルームメイト」のほうが先なのですが)
「症例A」のほうが好みだった理由は、“多重人格”という精神障害を医療の観点からとても丁寧に扱っていたためです。
ミステリとしては「ルームメイト」のほうがおもしろいかなと思います。
もちろん、本作品がおもしろくないわけではないですが、最後のオチや本作品のテーマである“多重人格”について、この作品だけの特筆すべき内容というものがあるわけではないため、これまで出会った作品、読んだ順番の影響で人による評価がかなり上下する作品だと思います。
映画も1度見てみたいなと思います。
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