小説 ~ 葉桜の季節に君を想うということ ~



葉桜の季節に君を想うということ(はざくらのきせつにきみをおもうということ)
著者名: 歌野晶午(うたの しょうご)
出版社: 文藝春秋
発売日: 2003/3
ジャンル:ミステリ




「葉桜の季節に君を想うということ」は 歌野晶午さん著作で、何でも屋の元探偵が悪徳商法を働く組織の悪事を暴くために奮闘するハードボールドミステリ小説です。

“このミステリーがすごい! 2004年版第1位”や”第57回日本推理作家協会賞受賞”、”第4回本格ミステリ大賞受賞”等、数多くのミステリに関する賞を受賞しています。



あらすじ


ガードマンやパソコン教室講師、ドラマのエキストラ等、「何でもやってやろう屋」を自称する主人公の成瀬将虎(なるせ まさとら)は女と体を鍛えることが好きな元探偵です。


あるとき、舎弟のような存在である高校生の芹澤清から相談事を受けます。

それは清が想いを寄せている白金台に住む令嬢、久高愛子の悩みを解決して欲しいというものでした。

愛子は祖父を轢逃げの事故で失ってしまったが、それは事故ではなく、蓬莱倶楽部(ほうらいくらぶ)という悪徳業者の保険金詐欺事件であると彼女は確信しており、将虎と清にその証拠を掴んでもらいたいという内容でした。

同じ時期に、将虎は駅のホームで自殺しようとしていた女、麻宮さくら(あさみや さくら)と偶然に出逢います。

将虎は半ば強引にさくらを助けるのですが、彼女のことがその後も気になり、惹かれていくことになります。

将虎は過去の探偵時代や何でもやってやろう屋の経験を回想し活かしつつ、またときにはさくらの協力も得て、事件を解決していくこととなります。


また、蓬莱倶楽部に係わる人物として古屋節子(ふるや せつこ)が登場します。

彼女は夫に先立たれ、二人の息子はすでに自立しており、生粋の買い物依存症の影響もあった結果、蓬莱倶楽部の鴨となってしまいました。

多額の借金をこしらえ、そして借金を返すために蓬莱倶楽部の悪事に加担し、そしてその悪事を警察にばらすと脅迫され、また悪事を働け、借金を返せ、と泥沼に浸かっている状態です。


物語は成瀬将虎の現在と過去それぞれの一人称視点、そして古屋節子の一人称視点の3視点で進んでいき、二人が邂逅するとき物語は思わぬ展開に進んでいきます__



感想

何でもやってやろう屋を自称してる探偵物でハードボイルド物です。

主人公の成瀬将虎は半人前を自称している当たり、ハードというよりは半熟的な面がありますが、この話にはそれがあっているように思います。

主人公の一人称視点がメインであり、女に少しだらしない面や若干イリーガルな面に抵抗がなければスラスラと読めるのではないでしょうか。

そして、この小説の最も重要な売りは、とあるギミックを利用した小説だということです。

大きなくくりで言えば、同じようなギミックを利用した小説は他にもあるのですが、共通する感想として、どういったギミックかについては事前知識なしで読んだほうがいいと思います。

この小説の場合は発想が素敵なことと、発想だけではなく物語としておもしろくまとめている点がすごいと思います。

映像化は難しいかもしれません(といって似たようなギミックで映画化した小説もありますが)。






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