純潔のマリア(じゅんけつのまりあ) -Sorcière de gré,pucelle de force-
作者:石川雅之(いしかわ まさゆき)
出版社:講談社
掲載誌:good!アフタヌーン
巻数:全3巻(2010/2/5 ~ 2013/10/7)、番外編exhibition全1巻(2015/1/7)
「純潔のマリア」は中世ヨーロッパを舞台に、人間の幸福のために戦争を終結させることを切望する魔女マリアが神様や愛に立ち向かうファンタジー漫画です。
著者は、菌が見える主人公の農業大学での出来事を描いた学園教養漫画「もやしもん」で有名な石川雅之さんです。
本作品は2015年シーズンの冬にアニメ化もされています。
あらすじ
舞台は中世ヨーロッパ、フランス王国とイングランド王国との戦争(百年戦争)が続き、弱き民衆がいたるところで神様に救いを求めています。
少女でありながら偉大な力を持つ本作の主人公マリアは異端の者として人間から嫌悪されることもある魔女でありながら、弱者の味方であり、戦争がすべてなくなればよいと考える勧善懲悪のヒーロー的な考えを持つ存在です。
毎夜、戦争の指揮官のもとに淫乱な夢魔を送り、男を骨抜きにすることで目立つことなく戦争を起こさないようにするのがこの世界の魔女の基本的な役割のようです。
しかし、マリアは使い魔のフクロウをサキュバスとして放つ一方で、まだ幼い部分もあるためか、目の前で自分の見たくないものを止めるためであれば、この世ならざる者であるドラゴンやバジリスクを召喚して戦争を強制的に終了させようとします。
また、淫乱なサキュバスを使い魔として放つマリアですが、(この世界での)キリスト教徒が最も敬愛し、神聖視する処女ということを使い魔にネタとしてからかわれていまいます。
そんなマリアですが、フランス軍の通信兵である一人の男性が気になっているようです。
一方で、困っている人間の味方となってくれるマリアに対して、宗教的な理由等で拒絶する態度や迫害する行為をとったりする人間もいます。
さらに、この世界の神様は、戦争が人間の理(ことわり)であり、すべての人間に対して平等でなければならないという方針のもと、祈りを求める人々を直接救済するようなことはしません。
むしろ、すべての人間に平等であるべきにもかかわらず、個人的な感情で、かつ目立つ方法で人の世に干渉する魔女マリアを敵対視し、注視しています。
そして幼き一人の魔女マリアは、相容れない価値観を持つ者に対して、何が正しいのか、何がしたいのかを主張しながら、皆が幸福な世界になることを望み行動していきます。
感想
テーマはシリアスなのですが、中身はコメディの割合も大きいです。
うぶで処女な魔女マリアが恋愛や性に関して奥手であることを、使い間におもちゃのようにからかわれている場面や、マリア自身の駄目っこぶりを楽しむ漫画でもあります。
ただ、処女という特徴は決してコメディのネタとしてだけではなく、物語の中での価値観や幸福観の天秤の材料にも利用されています。
戦争という舞台、単純な勧善懲悪物ではない価値観に対して、緩い雰囲気のコメディの存在が作品全体をほどよく中和しています。
マリアを自然と応援したくなる一方で、この作品でマリアの敵となる天界の大天使ミカエルの考え方も納得できるものだと思います。
マリアが望むのは皆が幸せな世界ですが、Aの幸せがBの不幸となる場合等が考えられていない点ではやはり理想主義者でしかないのかもしれず、偽善者と言われてしまうものなのかもしれません。それでも、考えて、話して、行動して何とかしようとするマリアはやっぱり魅力的だと思います。
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