小説 ~ 娼年 ~



娼年(しょうねん)
著者名: 石田衣良(いしだ いら)
出版社: 集英社
発売日: 2001/7(2004/5)
ジャンル:恋愛、ヒューマン




「娼年」は石田衣良さん著作、日々の生活に退屈している大学生がとあるきっかけから娼年(いわゆる男娼、コールボーイ)として働いていく経験を描いた恋愛小説です。

著者の石田衣良さんは東京都出身で、他の著書として1997年に第36回オール讀物推理小説新人賞を受賞した「池袋ウエストゲートパーク」や、2003年に第129回直木賞を受賞した「4TEEN フォーティーン」等があります。

本作品は第126回直木賞候補作であり、「逝年(せいねん)」のタイトルの続編もあります。

本作品と続編で幸田育子さん作画で漫画化、三浦大輔さん演出で舞台化が成されています。

舞台は2016年8月から9月にかけて、東京、大阪、福岡の3箇所で公演されています。
演出と脚本を映画「何者」の監督も務めた三浦大輔さん、主人公の領役に松坂桃李さん、静香役が高岡早紀さんと豪華であり、ベッドシーンも舞台で演じるということで話題になりました。


あらすじ


大学も友人も家族も、そして女性もつまらないと感じている大学生の森中領(もりなか りょう)、彼はアルバイト先のバーで働いているとき、女好きのホストである友人の進也(しんや)の同伴で店にきた大人の女性、御堂静香(みどう しずか)との会話を通して、

女性やセックスがつまらないというのは、問題あるなと思うな

との指摘を受けます。その帰り際に静香から領へと名詞が渡されますが、領はその場で名刺をすぐにゴミ箱に握りつぶして捨ててしまいます。


1週間後、また静香が今度は一人でバーにやってきます。

静香はセックスが退屈だという領に対して、そのセックスに値段をつけてあげると言います。領は悪意をもってそれに応えます。

いいですよ。買ってください。
どうせ今夜も帰って寝るだけだ。
退屈なのは同じです

領はその時とその後の経験をきっかけに、日々の生活の退屈な檻を破れるかもしれないと、娼年として「情熱」を探すことになり、様々な女性や同僚を通して普通では体験できないことを積み重ねていくことになります__



感想


恋愛小説に分類していますが、恋愛というよりも、主人公の人としての経験の積み重ねと成長に焦点があたっている印象が強いため、恋愛小説と聞くと違和感を覚えることもあります。

主人公があらゆるものが退屈だと達観している点、考え方や行動は草食系だけど、やたらもてていつのまにか肉食系になっている点等、主人公のタイプとしては村上春樹さんや本多孝好さんの作品で見るタイプに近い印象を受けます。

また本作品で取り上げられている女性はアブノーマルな性癖を持っているようですが、どこか冷静で上品な感じに描かれている印象を受けました。

よって、性描写が多くある作品ですが決してそれが下品だとか醜悪だとかいう印象は持ちませんでした。それが良いのか悪いのかはわかりませんが、読みやすいとは思います。


冒頭でも言っていますが、やはりちょっとした厭世観を持つ主人公が様々な女性との経験を通して価値観が変わっていく話のウェイトの方が強いと思います。


そして、恋愛物として見るのであれば、あの結末は個人的に消化不良になっていまいます。
まあ、そのための続編なのかもしれません。





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